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さぬちゃんの麻酔科医生活


フツーの麻酔科医

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FACEBOOKの写真を変更した。わかくなった?とか、さまざまなご意見がある。恐らく、この写真は昨年の臨床麻酔学会のときのランチョンセミナーの写真だろう。本人としては、むしろ年をとったと思っているのだが、いかがだろう。

 さて、本題。「フツーの麻酔科医」について。最近、麻酔をかけているときに、手術室の看護師から「先生は、フツーの麻酔科医でないから」といわれるとドキッとする。なぜ、この人達に私の素性がバレているのか?そう思うのであるが、次の瞬間、大抵は「他の先生とは違って、わかりやすく指示してくれるから」とか「先生がすると失敗しないから」といわれて、ホッとする。それは、当たり前である。医師になって、いや、麻酔科医になってすでに30年近くなる(正確には、あと何年かで30年になる)。しかし、この「先生は、フツーの麻酔科医でないから」というコメントは、聞き捨てならない。裏を返せば、そうでない麻酔科医が多いということである。このFACEBOOKの写真のように、ゆるやかに階段をあがるように、麻酔科医としてのスキルは向上する。スキルというのは手技という意味ではない。行動や所作あるいは考え方を含めたスキルである。今日よりは明日、この症例よりは次の症例の方がうまくいく確率が上がると考える。調子が悪いということもあるのだが、いつまでも調子が悪いで片付けられるわけではない。立ち止まることもあるが、必ず前を向いていれば、今を頑張れば、必ず次の階段に登れるのである。ただし、いい加減に片付けていたり、マンネリ化して今をあきらめていると、決して階段は登れない。

 私は「フツーの麻酔科医」である。フツーでない麻酔科医が、多い状況は何とかしなければならない。少なくとも、看護師にそう思われているのは、麻酔科の名折れである。

 みんな、もっと頑張って欲しい。

わたしが、フツーでないのは、テクノロジー系の麻酔科医であるという点だけである。テクノロジー系麻酔科医であることは、看護師にはバレていないようだ。このブログを読んでいれば、バレるのだが、こういった情報はインターネットからは得ないらしい。

過去の記事で、以下の様なところを読んでみればわかる。

msanuki.hatenablog.com

msanuki.hatenablog.com

 

点滴ルートを確保するときに失敗するんじゃないかと思わないこと!

病院内で、呼び止められてふと振り返ると、懐かしい顔があった。以前、手術室で一緒に働いたことがある看護師さんだった。今は、外来看護師として働いている。この看護師さんが、唐突に「先生の本に書いてあった、点滴を失敗しないコツはいまでも守っているよ。点滴ルートを確保するときに失敗するんじゃないかと思わないこと!でしょ」。一瞬、私の頭が???となったが、先生の本とは「麻酔科研修チェックノート」のことであることを思い出した。確かに、初版から動 静脈ルート確保のPOINTとして、「穿刺時に「失敗するのではないか」と思わないようにします」とかいている。第5版ではp.297にある。研修医に私がいつも言っていることを聞いている看護師さんもいて、それを思い出して言っているのかと思ったが、「麻酔科研修チェックノート」を密かに読んでいたらしい。彼女は初版の読者であった。

今では、「麻酔科研修チェックノート」は研修医に限らず看護師、医学生、薬剤師などが持っているのを目にするが、初版本を読んでいたとは恐れ入った。初版が出たのは2004年である。

「麻酔科研修チェックノート」は、麻酔科医として働き始めてから、麻酔科に研修に来た後輩や看護師などに教えてきたことを文字にした、マニュアル本である。教科書には通常書かれていない「さぬちゃん語録」が、随所にちりばめられているため、そこがウケているという話もある。この「さぬちゃん語録」がさらにパワーアップして、もっと詳しく「今の麻酔の考え方」を示したのが、今年6月に上梓した「やさしくわかる!麻酔科研修」である。この本は、構想10年、執筆に本気で半年以上かかっている。筆が遅いといわれればそれまでだが、これほど世に出るまでに時間がかかった書籍は初めてである。かなり、内容を何度も練り直し最新情報を入れて、本文は何も予備知識がない看護師1年目でも理解できる程度とした。医師であれば、研修医でもすいすい読める内容であるが、これを読んだ後は、きっと麻酔科のやっていることがクリアーに理解できる様になる。実際、医師3年目の駆け出しの麻酔科医たちから「むっちゃ分かりやすい」とのお褒めの言葉もいただいた。医療機器を販売している方々や麻酔科医の使う薬を販売している方々が、最近、この本をもって私のところにサインを求めに来たついでに、自社の製品を宣伝するという新手のセールスも横行しはじめた。

 本来、私がこの書籍を執筆した目的は、麻酔科のやっていることを麻酔科にかかわる多くの医師、コメディカル、周術期関連製品を扱っている方々に理解してもらうことにあった。その意味では、もっと多くの方々に知ってもらいたいと思う、今日この頃である。讃岐塾で繰り広げられるさぬちゃんワールドを広めて周術期医療をよりよいものにしたいと考えている。

 あ、そうそう、もう一つ言い忘れたことがある。ポリクリのネタや研修医の指導のネタに困っている指導医の方々にもコメントをいただいた。たくさんのネタが隠れているので、参考になると、、、お世辞かもしれないのだが、とてもうれしいコメントだった(^_^)/

 

 

やさしくわかる!麻酔科研修

やさしくわかる!麻酔科研修

 

 

 

 

 

麻酔科研修チェックノート―書き込み式で研修到達目標が確実に身につく!

麻酔科研修チェックノート―書き込み式で研修到達目標が確実に身につく!

 

 

麻酔科医的な身体感覚!?

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原稿書きに疲れたので、身体を動かすことにした。約1年ぶりのインラインスケートである。インラインスケートはスキーのオフトレとして10年ほど前にスキーを始めたときから開始した。最近は、少し疎かになっていたので、冬シーズンのスキーに備えて再開したいという思いがある。

さて、本題。

 インラインでは、スキーよりもシビアな動作が要求される。インラインもスキーもバランスが大切なスポーツであることには違いないが、前後バランスはインライン方がスキーより短い分だけ、シビアである。靴に寄りかからずセンターに乗れるようになると、スキーを履いた時にしっかり踏み込めるポジションができる(と信じている)。
 スキーの雪面コンタクトとインラインスケートの地面コンタクトには共通点がある。コンタクトせずに方向を変えていくことはいずれも不可能なため、大地とのコンタクトが大事である。
 スキーではターン後半からニュートラル(切り替え部分)に移行する感覚が大切だが、これはインラインでも同じ。このニュートラルの部分で、一旦斜面にフラット状態なる感覚が、ターン前半のスムーズな運動につながる。インラインでは、"立つ”感覚なのである。このきりかえがうまくないと、スピードを出していると取り返しがつかない事態になる)。インラインもスキーも、走る感覚ではなくて歩く感覚で、体幹部の真下で足が左右に入れ替わる身体感覚なのである。

今日のインライン、始めてみると課題は従来から抱えているものとおなじ。左ターン(右が外足)は、キレイに動けるが、右ターン(左足が外足)になると、うち足(右)に乗ってしまうくせが抜けない。つまり、左足の地面コンタクトが悪い(身体から遠くに左足がある感覚)。久しぶりで筋力が弱っているだけではなく、明らかに左足が不器用になっている。右ターン→ニュートラル1→左ターン→ニュートラル2→右ターンのうち、左ターン→ニュートラル2→右ターンがまずい。微妙に遅れている。反応性が悪い。少し前からかまえてみても遅れる感は否めない。呼吸で言うと、吐ききらないのに吸い始めてしまう感じである。90分程度で、身体感覚がすこしわかりかけたところで本日は終了。

 一番大切なことは一回二回巧くいかないからといって止めないことだと思う。練習を継続するところに意味がある。これは、日常臨床における手技も同じ。よく、医学は科学なので誰にでもできることが大切といわれるが、まさに、理屈はわかってもできるかどうかは別(うまいかどうかは別)なのである。身体感覚という言葉を使ったが、これは手技の巧拙にもかかわる感覚と同じと認識している。麻酔科だけでなく手術はもっとそうだろう。

 

やさしくわかる!麻酔科研修 著者紹介より

「ライフワーク」
 麻酔科「讃岐塾」は、いつ、誰が命名したのかは定かではないが、いつの頃からか、そのように呼ばれるようになった。話している内容は同じだが、わかりやすさを追求するために相手にあわせてレベルを変えている。最近は、テレビの影響もあり「池上さん」よりわかりやすいとか、「池上さん」のようにわかりやすいとかいう評判をいただくことがある。この評判は、うれしい限りであるが決して麻酔科の「池上さん」を目指しているわけではない。若い頃から、自分の仕事を楽にしようと研修医や若手医師、看護師教育に力を注いできた。そのスタイルは、地のままで自然体そのものである。それがかえって、うけているのではないかと思っている。いつも新しい話題を提供しつつ、オリジナルのギャグを交えながら解説を行うスタイルは「讃岐塾」の真骨頂である。若手の人びとに、いつものように解説をしていると、師長クラスの方々が、密かに近づいてきて傍聴(盗聴?)しているのを目にすることが多くなった。それも、私にとっては励みになる。多くの方々が、この「讃岐塾」の良さに気づいてくれているのはうれしい限りである。
ここまでかいて思ったが、超天然前向き思考であるこの性格が受けているのかも。これからも「讃岐塾」が多くの人びとを巻き込んで、周術期医療に貢献できたらいいなと思っている。

 

やさしくわかる! 麻酔科研修

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