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さぬちゃんの麻酔科医生活


「麻酔の偉人たち」(総合医学社)がおもしろい!

 

麻酔の偉人たち―麻酔科学史に刻まれた人々

麻酔の偉人たち―麻酔科学史に刻まれた人々

 

 

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先日の日本麻酔科学会の併設書籍展示で購入した「麻酔の偉人たち(総合医学社)」がおもしろい。この書籍の原著「Notable Names in Anaesthesia」は2年ほどまえに入手して、一応、すべて読んで、その時にはふむふむと思ったのだが、現在は、あまり頭には残っていなかった。

 

Notable Names in Anaesthesia

Notable Names in Anaesthesia

 

 今回、この日本語訳を会場で発見して、購入してすぐに読んでしまった。やはり、日本語は頭にすーっと入ってくる。日本語訳がうまいこともあるのだろう。読み方は、好き好きだと思うが、どの偉人の記事も読むとわくわくするものばかりである。ぱらぱらめくっていって、気になる偉人のところを拾い読みするのもよし、まえから順に暇にまかせて読んでいくのもよし。

 この手の書籍には、常に偏見がつきまとう。歴史オタクの学者の興味にまかせて、書かれているのではないか。つまり、われわれの興味があることと、歴史学者の興味があることとは違っているのではないかと言うことである。ひとことで言うと、つまらないという偏見である。

 原著を読んだときにも思ったのだが、本書がそのような本ではないということである。カルガリー大学の麻酔科学のJ. Roget Malyby教授が執筆しているという点で、従来の歴史学書とはちょっと違うのである。原著の序文にも「本書は麻酔の歴史本であるが、麻酔科学史の書ではない。名前を残した人の一生、つまりどの様な人物であったか、いつ、どこで彼らが仕事をしたのか、なぜ、どうしてそのような機器あるいはスコアが作られたのか、さらになぜ、彼らが偉大な指導者なのかなどを理解していただく目的だ」と述べられている。面白い理由は、読者の興味と著者の興味が一致しているところである。つまり、麻酔科学の有名人カタログに写真と業績が載っている。マッキントッシュ、アルデレーテ、アプガー、モートン、、、、超有名人ばかりである。そしてその内容のすごいところを著者が解説してくれているのである。

英語だといくら興味があると言っても、ちょっとハードルが高い。数時間で読み終えることはできないであろう。日本語だとそれが可能である。また、1名ずつの分量が適度な長さであるので、途中で終わっても構わない。

 そして、原著には載っていない華岡清州と青柳卓夫の記事が日本人のよく知った先生の解説で追加されている。原著者に、翻訳者である菊池博達先生と岩瀨義範先生が許諾をえて2名の日本人を日本語版に追加しているのも特筆すべきことだろう。

 だまされたと思って一度、読んでみてもらいたい。麻酔科学をさらに好きになる要素がふんだんにちりばめられている。